事故炉の廃炉は、通常の廃炉と異なり、溶融燃料や高レベルの汚染物質が多く存在しており、これを除去しながら廃止措置に向けた取組みを進めなければならない。 この取組は、我が国が未だに経験したことのないものであり、こうした前例のない廃炉等を円滑に進め、被災地の一日も早い復興を実現するためには、世界の叡智を結集し、 新たな技術やシステム等に関する研究開発も視野に入れた技術による対応が極めて重要となる。
事故炉の廃炉のように、放射性物質の放出や漏えい等のリスクが大きい環境下では、そもそも現場に近づくことが満足にできないため、不確実性の高い環境下での作業となる。 このため、複数の計画を用意し、進捗状況に合わせた見直しをしながら進めていくことが求められる。また、特殊な環境下での作業となるため、数多く発生する技術的課題の解決も同時に求められる。 こうした課題を踏まえた研究開発に取り組むため、原子力損害賠償・廃炉等支援機構では、廃炉等技術の研究開発の企画、調整及び管理を行う。
第1 廃炉等の適正かつ着実な実施の確保のために必要な技術に関する研究及び開発に関し機構が実施すべき業務に関する基本的な方針
1 実用化を念頭に置いた業務の実施
(1)重層的な取組
現場状況に不明な点が多く、不確実性が高い状況に対応していくため、リスク評価の結果も踏まえつつ、重層的な取組を進める。
(2)現場ニーズを踏まえた目標等の優先順位付けと柔軟な見直し
短期及び中長期の現場のニーズや課題を踏まえ、達成すべき目標について、優先順位を付けた上での研究開発の企画を進める。さらに、最新の知見や実際の廃炉工程から得られた知見等のフィードバックにより、目標等の柔軟な見直しを行う。
(3)効率的な研究開発の実現
効率的な研究開発や適切な分担の実現により、無駄の排除を行うとともに、廃炉工程に適用できるように成果を出す。
(4)基準等の策定に資する取組
事故炉の廃炉等を適正かつ着実に実施していくためには、新しい技術等の安全性・信頼性を確保しつつ、実際に適用するために必要となる基準等がタイムリーに整備されることが重要である。
このため、事故炉の廃炉に向けた工程において必要となる基準等の考え方を整理するとともに、技術の研究開発においても、新たな基準等の策定に資する取組を進める。
2 安全確保を重視した取組
(1)リスクの大きな事象の防止
実際の廃炉・汚染水対策において、再臨界や高濃度汚染水の流出、放射性物質の再飛散等といったリスクが発生しないよう、研究開発の企画においては、それらのリスクを適切に評価し、その最小化を図ることとする。
(2)作業員の安全確保
実際の廃炉・汚染水対策における作業員の一般作業安全確保に加え、作業に伴う被ばくリスクの低減を図るよう研究開発の企画を行う。また、研究開発の実施においても、同様に、作業員の一般作業安全確保に加え、作業に伴う被ばくリスクの低減を図る。
3 適確なマネジメントの実行
廃炉事業者や研究開発実施機関等、国内外の団体と密接に連携し、研究開発分野におけるマネジメント(企画、調整及び管理)を行う。あわせて、廃炉事業者や日本原子力研究開発機構をはじめとする研究開発実施機関等の適切な役割分担を構築するとともに、必要に応じた競争関係の構築の両立を図る。
4 円滑な廃炉作業を進めるための国内外の叡智の結集
技術的難易度の高い課題に取り組むための情報収集、海外の研究機関等との連携等により、原子力以外も含めた国内外の最新の知見や技術を反映し、幅広い分野からの知見や経験の結集を行う。
第2 その他廃炉等の適正かつ着実な実施の確保のために必要な技術に関する研究及び開発に関する重要な事項
1 人材の確保に向けた取組
長期の廃炉作業をやり遂げるための人材を確保するため、廃炉・汚染水対策や研究開発に関する情報を適切に発信するとともに、研究・教育機関等との連携等を図ることにより、研究者や技術者の育成を促す。
2 事故炉の廃炉作業の中で得られる情報・研究成果等のアーカイブ化・情報発信
事故炉以外の廃炉プロセスでの活用や、国内外で類似のトラブルが発生した際の対応、原子力施設の安全高度化に資する事故究明への貢献、さらには、人材育成への利用等を視野に入れ、廃炉事業者や日本原子力研究開発機構をはじめとする研究開発実施機関等と連携、協力し、事故炉の廃炉作業の中で得られる情報・研究成果等を集約し、アーカイブ化するとともに、国内外に適切に発信する。
以上